この誓いと共に。




「心配しなくても、そう簡単に帰ったりしないさ」


別れの時の訪れを覚悟して落ち込む私に彼がかけてくれた言葉。
彼がこの異なる世界を満喫していたとはいえ、
「元の世界に帰る」と言っていたことを、
彼は帰らなきゃいけない人だと、
自分でも分かっていた。
だからこそ。
別れを覚悟していただけに、
その言葉を聞いた時は驚いてしまった。

でも同時に彼の優しさに感謝した。
彼と一緒にいたいと思う気持ちは強かったけど、
あの時の私にはまだこの世界を離れる覚悟ができていなかったから。




あれから一年と少し。
私は一大決心をしてここにいる。




「私ね、ずっと思っていたの。
ヒノエ君からうれしいことや楽しいこと、
たくさんもらってるのに、
私はヒノエくんに何かあげられてるだろうかって。」

「…オレは姫君の喜ぶ顔が見られればそれで満足なんだけどね。」

「うん。
ヒノエくんはいつもそう言ってくれるよね。
でもね、私もヒノエくんに同じ気持ちをあげたいの。」


私が居たからこの世界に来てくれたといってくれた彼。
私が彼と一緒にあの世界に行くという決心が着くまで待ってくれた大切な人。


「だからね…」


急に顔を近づけて、
滅多に見れない彼の驚く顔にちょっと嬉しさを覚えつつ
軽いキスを彼の唇に落とす。


「私をあの世界に連れて行って?」

「望美…いいのかい?」

「うん、学校もちゃんと卒業できたし、
親や友達にもちゃんと言ってきたから。
私も、これでもちゃんと考えていたんだよ?」


私はちゃんと笑って言えているかな。
淋しくないといえばうそになる。
でも彼と、
ヒノエくんと
ずっと、ずっと一緒にいたい。
そう思ったから、
そう心から思えるようになったから。
だから…。


「ヒノエくん、今日まで待っていてくれて本当にありがとう。
…一緒に連れて行ってくれる?」

「当たり前だろ?
 望美、絶対後悔なんてさせないから安心しなよ」


おそるおそる聞いたのもきっと見破られていたんだろうな。
そう言って近づいてきた彼の綺麗な顔に、
赤くなってしまう自分を自覚しながら、
もう何度目かになる彼からのキスを甘受する。
未だに抜けない直後のあのき恥ずかしさに、
彼の胸に顔を埋めていると、
それを狙ってか耳元で囁かれてしまった。


「それにしても、
まさか姫君から口付けてくださるなんて思いもしなかったな。
一体どういう心境の変化だったんだい?」

「う、うん。
今日はヒノエくんの誕生日でしょ?
あの日の返事もそうだけど、
待ってくれたお礼と、
ヒノエくんがここにいることに感謝の気持ちを込めたかったの。」


恥ずかしいという気持ちを越えて彼の顔を見てそう言えたのは
この気持ちに自信を持っているから。
ちゃんと彼に伝えたい、
伝わってほしい
そう、思ったから。


「ありがとう、望美。
 サイコーの贈り物だ」




大切な人が生まれたこの日に誓おう。
彼に負けないぐらいの、
大きなこの気持ちを伝え続けよう。
彼のこの笑顔が絶えることがないように努力しよう。
彼と過ごすこの平安な時間を大事にしよう。



ずっとずっと一緒にいよう。




============================================
今まで書いた作品の中でもとびきりの甘々を目指してみましたが、
いかがだったでしょうか? 今回、実はどの作品でもさせていなかったことを二人はしています。
友人曰く、架月の作品は甘いものが多いそうなので(自分ではさほど実感がありませんが)
そう考えるとありそうでなかった「あること」です。
でも、今回は他でもないヒノエの誕生日なので
恥ずかしさを押してがんばってみました!
ヒノエにいい思いをさせてやりたかったんですよ!!
…分かる人はどれくらいいるんでしょうね?(笑)