もう、何も望みはしないから。




朝からなにやら仲間の様子がおかしい。

朝餉の時に皆に「夕刻まで景時の邸には入るな」と言われ、

何が何だか訳もわからず承諾したものの、

仕事の間中、気になって仕方がなかった。

それに加え、

俺だけが蚊帳の外だという淋しさも感じ、

時が経つとともにだんだんと腹が立ってきた。

何だというんだ、まったく。



所用を済ませ景時の邸に着いたのは約束の刻限。

これなら文句はないだろうと勝手知ったる邸の門をくぐった。

が、奥が騒がしい。

あいつら、また何かやっているのか?



「はやくはやく、もうすぐ帰ってきちゃうよ!」

「ふふ、そうこう言っているうちに本日の主役が帰ってきたようだよ」

「えぇ、もう!?皆、準備はいい?」



皆がいるであろう、

奥の室に近づくにつれ声が漏れ聞こえてきた。

が、やはりよくわからない。

これは直接聞くしかないと目の前の戸に手をかけた。



「おい、お前達、一体何を……」

「せーのっ、
      九郎(さん・殿)、誕生日おめでとう!!!」



そう、皆の声が聞こえたと同時に

目の前で何かが爆ぜる音と共に色とりどりの紙が舞い降りてきた。

景時の銃からでた物なのだと理解したのは

紙がすべて床に落ちきるところだった。

それほど、驚きで頭が上手く働かなくなっていた。



「な、なんだというんだ?」

「えへへ。今日、九郎さんの誕生日でしょ?
だから皆で誕生日パーティーをしようって計画したの!」



何故だかわからないが、

えらく満足気な表情をした望美がそう答えた。



「ぱーてぃー?」

「宴のことなんですって。」

「望美ちゃん達の世界ではね、
生まれたその日が特別な日なんだって〜」

「だから、姫君達の世界の慣習に習って
九郎の生誕の宴をやろうってことになったんだよ」

「九郎殿、おめでとうございます」

「お前はよくやっている、 これからも驕れることなく精進しなさい」

「それにしても、
あの九郎の驚きようといったら、ふふふ」

「九郎さん、俺が腕によりをかけて作りましたから
熱いうちに食べてみてください」

「九郎、譲が作ったけーき、はやく食べよう!」



仲間からそれぞれ矢継ぎ早に言われ、

ようやく理解できた。

そうか、

皆はこの宴のために朝から支度をしてくれていたのだな。



「皆に、気を使わせてしまったんだな、すまない」



そう言ったら、



「んな、水臭いこと言ってんなよ、九郎」

「そうだよ!九郎さん、
こういう時に言うぴったりの言葉があるでしょう?」



と、すかさず怒られてしまった。

そうだな、

皆にいうべき言葉がある。

俺はなんていう幸せ者なんだろう。

俺には祝ってくれる仲間が大切な人が側にいる。

こんなに幸せなことはない。



「ああ、ありがとう、皆。俺は幸せものだ。」





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―おまけ―
「九郎、これは私からだ」
「小刀、ですか?」
「うむ。神子からお前が久々に木彫りをやりたいと言っていたと聞いたのでな。」
「はい、望美に趣味を聞かれ、
先生に以前教えて頂いた木彫りをまたやりたいと思っていたのです」
「そうか。あれは精神統一にもなる、がんばりなさい」
「はい、先生ありがとうございます!」





とか、会話して、
九郎が目には見えない尻尾をはちきれんばかり振っててくれるといい。
めっちゃいい。
個人的に先生からのプレゼントは趣味用小刀がいいなぁー。
譲君からは料理のプレゼントもしくは、
料理のリクエスト券(小学生みたい…!?)。
他のみんなは何をあげるんだろう…???想像するだけでも楽しいvv


初めて書いた九郎さんですが、書くのが楽しくてしかたなかったです!
そのせいか、常よりもえらく短時間で出来上がりました。
あ、でも愛情はたっぷりこもってますよ!(笑)
九郎さんはサプライズでされたらめっちゃ驚いてくれるだろうと思います。
やる側としても九郎さんくらい驚いてくれればやりがいあるよね!!
今回、「皆でお祝いv」がテーマだったので
台詞も望美ちゃん+八葉+朔ちゃん+白龍の分書いてみましたが、
誰が誰かわかります??
ヒノエくん以外は初めてと言ってよいので口調の書き分けが少し心配です…(笑)

なんにせよ、九郎は皆から愛されているのがよいですよ!!