この状況はどうしたものか。
小夜は真剣に困っていた。


「あの…
 ソロモン?」

「なんですか?小夜。」


戸惑っている小夜とは対照的なひどく楽しそうな様子のソロモン。
小夜の戸惑いの原因が自分にあるとは微塵も思っていない様子である。
その声にますます困惑を隠しきれずに小夜は聞いた。


「ねぇ。
 どうして私の行くところ行くところ、ついて来るの?」

「小夜。
僕は言いましたよね?
『もう貴方なしでは生きていけない』と。」

「うん、それは聞いた…」


目の前の彼に何度も何度も言われたのだから、
いくら物を覚えるのをあまり得意としない小夜でも忘れるはずがない。
こくりと頷くそんな小夜の答えにますます笑みを浮かべ、
ソロモンは続ける。


「そして貴方はこんな僕を受け入れてくれた。
 そうですよね?」

「う、うん。」

「それが答えにはなりませんか?」

「え?」


確かに、ソロモンと共に生きていくことを決めたのは小夜自身だ。
でも、今、この状況にそれが一体何の関係があるというのだろう。
小夜は、混乱し続ける頭でなんとか答えを導き出そうとしていた。
そんな様子の小夜に、くすりと笑みをこぼすと、
ソロモンはまるで子供に言い聞かせるように続けた。


「まだわかりませんか?
 僕には、貴方とたとえ刹那であっても離れることなど考えられないんです。
 だから……」


そこまで聞いて、
ようやく小夜にもソロモンの言わんとしていることが理解できた。

『だ、だめだ。
 このままだとまたソロモンのペースになっちゃう…!』

これまでの経験から嫌というほどわかっている。
今のままでは彼は本気で実行に移す。
断言してもいい。
どうにかして諦めさせないと…!


「それはわかった。
 わかったけど!」

「けれど…なんです?」

「だからってこんな場所までついてこなくてもいいでしょ!?」


ソロモンの腕の中に閉じ込められた今、
何を言っても彼はのらりくらりと本題をそらしてしまうだろう。
しかし、場所が場所だけに、
いくらなんでも小夜とて譲れない。
だが、もちろん聡い彼に小夜の気持ちがわからないわけが無く。
理解した上でやっているのだから小夜に勝ち目があるはずがなかった。


「いいえ。
 貴方は知らないんです。
 貴方が僕の隣から居なくなってしまったら僕は死んでしまう…」

「居なくなったりしないよ!
 ほんの少しの間でしょう?」

「貴方には少しの間でも
 僕にはそれすら惜しいんです。
 小夜、わかってください」


すでに小夜を説得しにかかっている状況のソロモンに
何を言っても無駄かもしれない。
しかしこれは小夜の許容範囲を超えている…確実に。



『もう…どうしたらいいの!!!』



そんな小夜の心の叫びを知ってか知らずか、
ソロモンの笑みは深まるばかりだった。




貴方が隣に居ないということ。

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小夜逃げて!!(byハジ)
すいません、思いついたのがこのネタでした…。
場所はご想像におまかせします(苦笑
でも、ソロモンならやりかねな…