奇襲をかけたつもりだった。
私の水なら彼を無力化することができる。
しかし、肝心の彼はうまくかわしたらしい。
憎たらしい人。
でも水と焔、相容れない存在だからこそ強く惹かれるの。
大事な人柱候補だけれど、あなたは私の手で…。


それぞれの想い。


「ここは私たちに任せて大佐は早くエルリック兄弟のところへ」

「ん、あ、あぁ・・・」


なんとも頼りない返事を残しながらも建物内へと向かう大佐を気配で感じとり、
リザ・ホークアイは目前の敵と対峙する。

水の化け物、大佐のところへいかせるわけにはいかない。
あの時からあの人を守ると誓った。
焔の錬金術師である大佐の唯一の弱点の水。
あの人に危険をおよぼすものは排除するのが私の仕事。
私の使命…。


「あら、焔の大佐は行ってしまったのね。
私はあの人に用があったのだけれど…。」

「ここから先は行かせはしない」


二丁の拳銃を相手に向けたまま放ったリザの声は、
自分でも驚くほど緊張感が漂っていた。
それはスロウスの間延びしたような声とはあきらかに対照的だった。
自分はこれほどまでに緊張していたのかと驚く。


「まあ、あの若い大佐を守るのに必死なのね。
でも自分の心配をしたほうがいいんじゃないのかしら。
あの人の焔も私には効かないけれど、それはあなたの銃も同じこと。
あなたに勝ち目はないんじゃないかしら」


『そんなことはわかっているわ』と、
リザは敵に銃をむけたまま心の中でさけんでいた。
しかし、たとえ致命傷にいたらずとも、足止めするくらいはできる。
その間に大佐やエドワード君たちが他のホムンクルスを片付けてくれる。
私はその時間さえ稼げればいい。


「そろそろ行かせてもらおうかしら」


その声が合図のように二人が戦闘体勢にはいったその時だった。
棘上の破片が地面から突き出てスロウスの行く手を阻んだ。
とっさに飛びのき、片方が好意をもってもう片方は忌々しさをもってその方向を見やる。
その先にいたのは豪腕の錬金術師であるアームストロング少佐だった。


「少佐!」

「ホークアイ中尉無事であったか。我輩が来たからにはもう安心である」


そう言うアームストロング少佐は一人ではなかった。
その後ろに何十人もの銀時計を腰につけた男たちがいた。


今や、スロウスの顔からは余裕の色が消えていた。
私たちを一網打尽にするためこれほどの数の国家錬金術師を?
冗談ではない。これほどまで数、いくら私でも対処しきれない。
ここは引いて皆と合流しなくては。


「待ちなさい!」


再び液体へと姿を変えて逃げるスロウスを追いながら、
手にした銃を撃つが弾はやはり効いている様子はない。
舌打ちしたくなるのをこらえながら少佐に向かって叫ぶ。


「少佐!大佐やエドワード君たちはこの奥です。
奴もきっとそこに向かうはずです。急ぎましょう!」

「うむ!」


建物の奥へと逃げる敵を追いつつ、
大丈夫だとは思いながら大佐やエドワードたちのことが気になってしかたがない。

どうか無事でいてください。
すぐに援護にむかいますから。

届くはずが無いことを認識しつつも、
語りかけてしまう自分がいた。
大切なあの人へ。



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USJのプレミアムイベントの映像より出た物。
ロイが第五研究所内に入った後のリザとスロウスが対峙の想定です。
これ、ロイアイじゃないですね。
ロイ←リザでちょっぴりロイ←スロウスですね。
私は断然ロイアイ推進派ですが、
ホムンクルスの女性陣(原作はラスト、アニメはラストとスロウス)は
結構ロイのことを気に入ってるんじゃないかと思うんです。
イベント行ってない方はよくわからないですね。ごめんなさい。